劉セイラの少年漫画的日々

中国語と日本語の2カ国語声優、劉セイラのブログ。
エッセイ漫画4月13日から「ふんわりジャンプ」にて連載開始!
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たてかべさん
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    たてかべさんのことを、親しい方々はかべさんと呼んでいます。
    私はそういう風に呼んでいいのかどうかずっと分からなくて、最後まで「たてかべさん」と呼ばせていただきました。

    最初の出会いは不思議でした。

    まだ東京の専門学校に通っていた頃、日本語をはやく上達させたいと、声ブログをやっていました。

    日本語で声日記を録って、できるだけ毎日更新していました。

    聞いて下さってた方々から、励ましのメールを頂いたり、間違った発音を指摘して頂いたり、色んな感想を頂きました。

    ある日、とあるリスナーさん(Sさんとしましょう)から、「紹介したい人がいます」というメールを頂きました。

    その紹介したい人がたてかべ和也さんでした。

    調べてたらびっくり!
    私は中国でドラえもんを観ていたので、皆さんと同じように「あの声だ!」とはなれなかったが、それでも、なんでこんなすごい方を私に紹介してくださるんだろうと、不思議に思っていました。

    そのリスナーさんとお会いしたことも、そこまでお話したこともありませんでした。

    一応返信させていただいて、お会いする時間は昼間、待ち合わせ場所は銀座の三越前でした。

    昼間の銀座だし…と半信半疑ながら、友人に行き先を伝えたりして、でも会いにいきました。

    そしたら本当にたてかべさんがいらっしゃいました。

    そしてたてかべさんの隣に、矢口アサミさんがいらっしゃいました。

    「こんにちは…」
    「あ、あなたが劉ちゃんね」

    帽子をかぶられていて、笑顔の暖かい、優しそうなおじいさんでした。

    Sさん含め、四人で銀座の喫茶店に入りました。

    Sさんとも初対面で、何をどう話したらいいか分からない私に代わって、なんと私のブログや色んな資料をプリントアウトして持ってきて下さって、たてかべさんと矢口さんに紹介してくださいました。

    「会えて嬉しいよ」とたてかべさんが微笑む。

    当時の私は、ただ声優になりたいという思いが強くて、実際どうすればなれるのか、外国人はなれるのか、まったく分からなかったです。(当時はすでに朴さんは日本生まれ日本育ちだと知りました。)
    その思いは伝えられたのかなと思います。

    それ以外、何を話してたんだろう。
    今必死に思い出そうとしても、四人の座り位置と、断片的な会話しか思い出せない。


    その後、たてかべさんから何度もお声をかけていただきました。

    飲み会でたくさんの方を紹介してくださったり、色んなイベントや場所に連れて行ってくださったり、たくさんご馳走してくださいました。

    日本式の飲み会には、最初なかなか慣れませんでした。
    後輩の方々がお皿を替えたり、料理を分けたり、先輩のコップが空きそうだったら、お代わりを呼んだりして色々と忙しい。

    私は分からなくて、何度か真似しようとしても、タイミングが分からなかったり、言葉にできなかったりしていました。
    先輩がおごるという文化も中国とは少し違うので、毎回毎回お金も払わないで気配りもできなくて、ただお話を聞いて食べるだけ、申し訳ない気持ちがどんどんどんどん強くなりました。

    ほかの方々はみんな声優さんや業界の大先輩。
    私は一年後日本に残れるかどうかも分からない、ただの学生。
    こんな私がここにいていいのかと、不安で申し訳なかったです。

    ある時、必死に皆さんのコップをにらんでいる私に、たてかべさんが
    「劉ちゃんはそんなことしなくていいから、俺の話をまじめに聞いてくれただろう、それでいいんだよ」
    と言って下さいました。
    「でも皆さんがコップを替えたり…」

    「日本人になろうとするな」

    と言って下さいました。

    当時の私は、その言葉の真意が分かりませんでした。

    日本人にはなれません。そんなこと分かっています。

    日本人じゃないから日本語が不自由で、なのに声優を夢見るという自分の馬鹿さ加減に、いよいよ気づくようになりました。
    日本人にはなれないから、声優にはやっぱりなれないかなと、憧れだけで日本に来た私は、少しずつ現実を知ってしまいました。

    視野が狭くなって、どんどん萎縮していた私に、その言葉に秘めた優しさを理解できるようになるまで、時間がかかりました。


    どうして私にこんなに優しくしてくださるのですか。

    ただ珍しいからかなと、ネガティブに考えたこともありました。

    ある日ついに勇気を出して聞いてみました。

    そしたらたてかべさんも、矢口さんも同じことを言って下さいました。

    中国から来たとか、留学生だからとか関係ない。
    劉ちゃんは劉ちゃんだから、私たちは「劉ちゃん」が好きだから。

    何人でも関係ない。

    そのお言葉で、私は私のままでいられました。

    何人とかじゃない、ただの「私」で、頑張れました。



    たくさんの出会い、たくさんのご縁で、私は今、日本で声優になれました。


    「劉ちゃんには、自由になってほしい」


    たてかべさんのお教え、素敵な笑顔、いつまでも私の心の中にあります。



    たくさんの愛を、本当にありがとうございました。

    お疲れ様でした。

    大好きです。



    さようなら。たてかべさん。





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      こんばんは
      ブログ読ませていただきました。
      なんかすごい不思議な出会いでしたね!

      大切な人とのお別れ、辛いとも思いますが、たくさん泣いて、そして、また頑張りましょう!
      言葉が下手で、申し訳ございません。
      とにかく、セイラさんもはやく元気出してくださいな!
      | Inatsu | 2015/06/19 10:49 PM |
      読完了,忍不住抹眼泪了(T ^ T)
      這種時候説任何話大概都是多余的,只能説縁分這件事很玄妙,人和人的相遇都是有意義的,所以大概离別也是有意義的吧…
      抱抱KK,就像你和老人家相識留下了宝貴的経歴一様,老人家有你這個年軽的朋友,也是他人生中美好的回憶吧。
      | kaku | 2015/06/20 12:06 AM |
      また偉大な方が旅立って行かれましたね。。。
      頑張ってる人を応援したいと思うのは、相手が外国人であっても同じだと思います。
      もしかしたら、より強いかもしれません。
      これからも、たてかべさんは天国からずっと応援してると思いますよ。
      | ロイ | 2015/06/20 5:28 AM |
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